信じやすく、やり始めるととことんやる性格なので、本や雑誌に掲載されているニキビケアを見つけると、すぐに次々と実行していました。
ニキビ肌にはコーヒーや刺激の強い食べ物はいけない、油っこい料理もだめ、お肉やお魚でも脂肪分の多いものはだめ、調理法は油で揚げるなんてもってのほか。
口にするものだけではありません。
環境についても、部屋を汚くしているとニキビ菌が繁殖すると聞けば、毎日掃除機をかけて部屋をピカピカにしましたし、枕がニキビ菌を媒介すると聞けば、毎日枕カバーをせっせと洗濯していました。
やってはいけないことが多過ぎて、精神状態が少しおかしくなっていたのかもしれません。
そんな生活を続けているうちに、ある事がありました。
当時は学生ですから母が作る料理を毎日食べていたのですが、母が作ってくれる料理に、「これは油使っているでしょ?」「これは油っこい」と、いちいち文句ばかりつけてたんです。
今思えば、すべての料理から油を全部抜くことなんてできません。ニキビが治らないイライラを、全部母親に向けてしまってたんですね。
でも、私のニキビ治療にいちばん積極的だったのは母なんです。
ニキビが治るという病院の噂を聞けば、連れていってくれたり、ニキビが治ったという人がいれば、遠くまで聞きにいってくれたりしていました。
その母がある日、とうとうキレました。
「じやあ、あんたはこれでも食べてなさい!」と夕飯時に私に突き出しだのは山盛りの蒸かしたジャガイモ。「これに塩をかけて食べれば、油はないわよ!」
これには私もショックでした。そこで気づきました。
私は自分のニキビばかりを気にして、ニキビに良くないとされる禁止事項を実践してきたけど、それで家族に迷惑をかけていたんですね。
自己中心的なワガママを言っていたと痛感した出来事でした。
私はこのことから少し意識が変わり、あまり神経質にならないように心がけることができるようになったんです。
油っこいもの、ケーキなど甘いものが絶対だめなんじゃなく、なるべく控えるようにするとか、たまには友だちとニキビを忘れて、楽しいおしゃべりをしながらケーキを食べるというように。
それでニキビがよくなったわけではありませんが、精神的には少し落ち着いたと思います。